今年のノーベル平和賞は核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が受賞し、ICANを代表して、広島で被爆経験のあるサーロ節子さんが感動的なスピーチを行いました。残念ながら世界は必ずしも核兵器廃絶の方向に進んでるとは言えない状況ですが、多くの人が核兵器の使用には反対の立場を取っています。
本書『届かなかった手紙』の手紙とは核兵器の誕生、即ち原爆開発のマンハッタン計画に関わった科学者たちの署名を添えた大統領宛の文書の事を指しています。その署名は日本への原爆の投下には反対するという内容のものでした。そもそもなぜ彼らは原爆の開発を決意し、そして反対したのか?唯一、戦争で核兵器を使用したアメリカ。その国の人たちは何に後悔し、何を反省しているのか、また唯一の核兵器の被爆国日本は彼らから何を期待したか?マンハッタン計画に関わった当事者などへのインタビューから浮き彫りになる気持ち。『事実』としての大きな発見はこの本にはないかもしれませんが、今だから話せる気持ちは貴重な肉声として、僕らを揺さぶります。
なお、サーロさんのスピーチにある『核武装した国々の当局者と、いわゆる「核の傘」の下にいる共犯者たち』には核兵器禁止条約に批准していない日本も含まれています。