美少女美術史(筑摩書房)

現在、大寒波が押し寄せ大荒れのニューヨークですが、年末のニューヨークも荒れておりました。その渦の中心にあったのは一つの少女の絵、仏画家バルテュスによる「夢みるテレーズ」でした。

目を閉じ寝ているかのような少女が膝を立てて座り、下着が露わになっているその絵は確かにインパクトのある作品で、作品を展示していたニューヨークのメトロポリタン美術館(MET)に撤去を求める署名運動が起こり9000名近く賛同を集めました。

果たしてこの絵が申し立て側の言う通り「『性暴力を巡る現状』からふさわしくない」かどうかは論を置くとして、芸術とポルノの境界はしばしば曖昧です。特に少年、少女をモチーフに描かれて来た絵画作品の多くにはその作品の素晴らしさと同時に官能さを持ち合わせている事は否定できません。また作品の発表された時代の状況、それまでの歴史の中での文脈というものも無視できない要素となっています。

『美少女美術史』は特に少女を扱った芸術作品にフォーカスを当てどのように少女が描かれてきたかが書かれおり、「夢みるテレーズ」についても終盤に言及しております。これは今回の一件への答えではありません。記事によるとMET側は作品の撤去はしないとした上で「今こそ議論の時だ。美術は過去と現在を照らし出す最も重要な方法の1つだ」と述べているそうです。黒か白かではなく、様々な意見を俎上に載せるための一冊として今改めて少女がいかに表現されてきたかを省みる機会にぜひどうぞ。なお当店には他に『美少年美術史』『残酷美術史』『官能美術史』がございます。